Parti の法規レポートは何を自動で確認し、何を申告・未評価のまま残すか

架空の敷地を Parti に入力し、用途地域の取得結果、法規レポートの各行の状態、制約一覧の由来タグ、ボリューム自動生成の結果を表示どおりに記録した。

問い

敷地の形、区までの住所、前面道路の幅だけを入力したとき、Parti の法規レポートはどこまでを自動で確認し、どこからを申告や未評価として残すか。架空の敷地 5 件で記録する。

方法

  • 製品と画面:Parti の Site ツールと Scheme ツール。
  • 架空の敷地:東西 20 m、南北 25 m の長方形を 5 件。Parti が面積の計算に使う平面直角座標系(第 IX 系)の上で、下表の点を中心に、座標軸に沿って作図した。 実在の区画や建物の形ではなく、住所は区までしか入力していない。製品内のプロジェクト名にも「架空」と記した。
  • 入力:長方形の頂点を GeoJSON の Polygon として「Boundary (GeoJSON Polygon)」に貼り付けた。前面道路は南側を幅 6 m、北・東・西を「道路なし」と申告した(四辺すべてを申告)。「Planned FAR %」「Planned BCR %」は空欄のままとし、住所のジオコーディングは行っていない。
  • 操作:「Save site」、「Fetch constraints」の順に押し、制約一覧と法規レポートを記録した。続いて Scheme を開き、「Generate from envelope」を押し、判定の欄と「建築可能ボリューム (buildable envelope)」の欄を開いて表示を記録した。
  • 道路幅を変えた測定:サイト 2、3(用途地域が住居系のものと、それ以外のものを一件ずつ)で、南側の道路幅だけを 4、8、12 m に書き換えて「Save site」を押し、同じ表示を記録した。「Fetch constraints」は押し直していない。最後に幅を 6 m に戻し、もう一度読み取った。
  • 読み取りの数:Site の画面と Scheme の画面を合わせて 26 回。
  • 表の書き方:長い文で表示される項目は、表では冒頭だけを載せる。容積率(far_pct)は最初の句点まで、Scheme の判定は条文の説明が始まる前までである。
  • 測定日と本番リビジョン:2026-10-13。Cloud Run リビジョン parti-sha-a97414c(コミット a97414c)。測定の前後でリビジョンは同じだった。結果はこの時点の本番リビジョンの出力である。

Parti の動きは、上のコミットのコードを読んで確認した。

  • 敷地面積:第 IX 系の平面上の面積を 0.1 m² 単位に丸めた値で、由来タグは derived である。
  • 用途地域の取得:「Fetch constraints」を押したときにだけ行う。 敷地境界と用途地域のポリゴンを重ね、ポリゴンごとに敷地面積に占める割合を求める。重心がどのポリゴンに入るかの判定ではない。 取得するのは用途地域、容積率、建蔽率の 3 項目である。
  • 法規レポートの行の状態:pass、fail、unevaluated、evaluated のいずれか。
  • 制約一覧のタグ:各行には、由来(declared、fetched、derived)と、それとは別の状態(confirmed、unconfirmed)が付き、画面は両方を表示する。 unconfirmed は、製品が値を得られなかった行の状態である。取得に失敗した行は、値が空のまま unconfirmed として記録され、既定値で置き換えられることはない。 敷地境界による取得では、交差する用途地域がなければ用途地域・容積率・建蔽率の行がすべて unconfirmed になる。用途地域が一つのときは、そのポリゴンが敷地の全体を覆っていない場合と値がない場合に、容積率と建蔽率の行が unconfirmed になり、それ以外は confirmed になる。 申告した値と、計算できた敷地面積は confirmed と記録される。 本ノートの表に出てくる行の confirmed は、製品がその値を取得、申告、計算のいずれかで得たことを示す製品内の状態であり、第三者が値を確かめたことを示すものではない。
  • 容積率と建蔽率の行:利用者が入力した計画値と上限を比べる。計画値が空欄なら unevaluated になる。
  • 前面道路幅員による容積率制限:四辺すべてが申告されている場合にだけ評価する。 申告された道路のうち最も広い幅を使い、幅が 12 m 未満のとき、上限を「指定容積率」と「道路幅 × 係数」の小さいほうとする。係数は住居系の用途地域で 0.4、それ以外で 0.6 である。
  • 容積率の行の書き換え:容積率の行は、取得のたびと敷地の保存のたびに、上の規則で書き換えられる。由来は、規則が適用されている間は derived、そうでなければ取得時の由来になる。行の状態は書き換えられない。
  • 斜線制限、日影規制、避難規定の行:法規レポートでは常に unevaluated である。斜線制限は Scheme ごとに評価し、日影規制と避難規定はこの段階では実装されていない。
  • Generate from envelope:階数の目標を「容積率の上限 ÷ 建蔽率の上限」の整数部分(最小 1)とし、各階の高さを 3.5 m として積む。建蔽率は各階の形に適用せず、延床面積を容積率の上限に切り詰めることもしない。超過は警告として表示する。

結果

入力した敷地。

サイト 入力した住所 中心の経度 中心の緯度 南側の道路幅 (m)
1 東京都港区 139.7387 35.6298 6
2 東京都新宿区 139.7175 35.6787 6
3 東京都千代田区 139.75127 35.69609 6
4 東京都新宿区 139.72219 35.70568 6
5 東京都中野区 139.66560 35.70574 6

「Fetch constraints」後の制約一覧の値。

サイト 用途地域 (zoning) 建蔽率 (bcr_pct) 容積率 (far_pct)(表示の冒頭) 敷地面積
1 準工業地域(quasi_industrial) 60% 360% = min(指定 400%, 道路 360%) 500 m²
2 第二種中高層住居専用地域(mid_high_residential_2) 60% 200% = min(指定 200%, 道路 240%) 500 m²
3 商業地域(commercial) 80% 360% = min(指定 700%, 道路 360%) 500 m²
4 近隣商業地域(neighborhood_commercial) 80% 360% = min(指定 400%, 道路 360%) 500 m²
5 商業地域(commercial) 80% 360% = min(指定 600%, 道路 360%) 500 m²

制約一覧の由来タグと、値の下に表示された出典。

制約(画面の表示名) 由来タグ 出典の表示 件数
bcr_pct FETCHED / CONFIRMED 国土数値情報 A29 用途地域 — 令和元年度 (2019) 5
far_pct DERIVED / CONFIRMED 国土数値情報 A29 用途地域 — 令和元年度 (2019) 5
zoning FETCHED / CONFIRMED 国土数値情報 A29 用途地域 — 令和元年度 (2019) 5
road_frontages DECLARED / CONFIRMED (表示なし) 5
site_area_m2 DERIVED / CONFIRMED (表示なし) 5

法規レポートの各行の状態。

行 状態 表示された説明 件数
対象地域(平面直角座標系 第IX系) PASS 東京都(申告された住所)— 第IX系の区域内、EPSG:6677 の有効範囲内 (in the Zone IX area; areas computed) 5
容積率 (FAR) UNEVALUATED no planned value declared 5
建蔽率 (BCR) UNEVALUATED no planned value declared 5
前面道路幅員による容積率制限(52条2項) EVALUATED サイトごとに異なる 5
斜線制限 UNEVALUATED 前面道路 北道路なし・東道路なし・南6m・西道路なし 申告済。斜線制限の適否(道路・隣地・北側)は各スキームの適合判定で階ごとに評価します。 5
日影規制 UNEVALUATED not implemented in this stage 5
避難規定 UNEVALUATED not implemented in this stage 5
住所と敷地境界の整合 UNEVALUATED requires both a confirmed geocoded point and a boundary 5

「Generate from envelope」の結果。

サイト total floor area 階ごとの面積(下の階から) 容積率の判定(表示の冒頭)
1 2640 m² 1-2F 500 m² ×2、3F 480 m²、4F 433.3 m²、5F 386.7 m²、6F 340 m² total floor area 2640.0 m² is 528.0% of the site area 500.0 m² — exceeds the FAR limit 360% by 168.0pp (840.0 m² over)
2 1444 m² 1-2F 500 m² ×2、3F 444 m² total floor area 1444.0 m² is 288.8% of the site area 500.0 m² — exceeds the FAR limit 200% by 88.8pp (444.0 m² over)
3 1913.3 m² 1-2F 500 m² ×2、3F 480 m²、4F 433.3 m² total floor area 1913.3 m² is 382.7% of the site area 500.0 m² — exceeds the FAR limit 360% by 22.7pp (113.3 m² over)
4 1913.3 m² 1-2F 500 m² ×2、3F 480 m²、4F 433.3 m² total floor area 1913.3 m² is 382.7% of the site area 500.0 m² — exceeds the FAR limit 360% by 22.7pp (113.3 m² over)
5 1913.3 m² 1-2F 500 m² ×2、3F 480 m²、4F 433.3 m² total floor area 1913.3 m² is 382.7% of the site area 500.0 m² — exceeds the FAR limit 360% by 22.7pp (113.3 m² over)

同じ画面の「建築可能ボリューム (buildable envelope)」の欄。

サイト 用途地域 (zoning) 「建築可能ボリューム (buildable envelope)」の表示
1 準工業地域(quasi_industrial) 道路斜線(南, 勾配1.5) / 隣地斜線(北・東・西, 勾配2.5) / 絶対高さ制限: なし(高度地区は本製品未保持)
2 第二種中高層住居専用地域(mid_high_residential_2) 道路斜線(南, 勾配1.25) / 隣地斜線(北・東・西, 勾配1.25) / 北側斜線(北, 立上り10m) / 絶対高さ制限: なし(高度地区は本製品未保持)
3 商業地域(commercial) 道路斜線(南, 勾配1.5) / 隣地斜線(北・東・西, 勾配2.5) / 絶対高さ制限: なし(高度地区は本製品未保持)
4 近隣商業地域(neighborhood_commercial) 道路斜線(南, 勾配1.5) / 隣地斜線(北・東・西, 勾配2.5) / 絶対高さ制限: なし(高度地区は本製品未保持)
5 商業地域(commercial) 道路斜線(南, 勾配1.5) / 隣地斜線(北・東・西, 勾配2.5) / 絶対高さ制限: なし(高度地区は本製品未保持)

南側の道路幅だけを変えたときの far_pct。

サイト 南側の道路幅 (m) far_pct(表示の冒頭) 続く句 far_pct の由来タグ
2 4 160% = min(指定 200%, 道路 160%) 52条2項 適用 DERIVED / CONFIRMED
2 6 200% = min(指定 200%, 道路 240%) 52条2項 適用 DERIVED / CONFIRMED
2 8 200% = min(指定 200%, 道路 320%) 52条2項 適用 DERIVED / CONFIRMED
2 12 200% 52条2項 評価済・非拘束 FETCHED / CONFIRMED
3 4 240% = min(指定 700%, 道路 240%) 52条2項 適用 DERIVED / CONFIRMED
3 6 360% = min(指定 700%, 道路 360%) 52条2項 適用 DERIVED / CONFIRMED
3 8 480% = min(指定 700%, 道路 480%) 52条2項 適用 DERIVED / CONFIRMED
3 12 700% 52条2項 評価済・非拘束 FETCHED / CONFIRMED

南側の道路幅だけを変えたときの「Generate from envelope」の結果。

サイト 南側の道路幅 (m) total floor area 階ごとの面積(下の階から) 容積率の判定(表示の冒頭)
2 4 968 m² 1F 500 m²、2F 468 m² total floor area 968.0 m² is 193.6% of the site area 500.0 m² — exceeds the FAR limit 160% by 33.6pp (168.0 m² over)
2 6 1444 m² 1-2F 500 m² ×2、3F 444 m² total floor area 1444.0 m² is 288.8% of the site area 500.0 m² — exceeds the FAR limit 200% by 88.8pp (444.0 m² over)
2 8 1484 m² 1-2F 500 m² ×2、3F 484 m² total floor area 1484.0 m² is 296.8% of the site area 500.0 m² — exceeds the FAR limit 200% by 96.8pp (484.0 m² over)
2 12 1492 m² 1-2F 500 m² ×2、3F 492 m² total floor area 1492.0 m² is 298.4% of the site area 500.0 m² — exceeds the FAR limit 200% by 98.4pp (492.0 m² over)
3 4 1426.7 m² 1F 500 m²、2F 486.7 m²、3F 440 m² total floor area 1426.7 m² is 285.3% of the site area 500.0 m² — exceeds the FAR limit 240% by 45.3pp (226.7 m² over)
3 6 1913.3 m² 1-2F 500 m² ×2、3F 480 m²、4F 433.3 m² total floor area 1913.3 m² is 382.7% of the site area 500.0 m² — exceeds the FAR limit 360% by 22.7pp (113.3 m² over)
3 8 2780 m² 1-3F 500 m² ×3、4F 473.3 m²、5F 426.7 m²、6F 380 m² total floor area 2780.0 m² is 556.0% of the site area 500.0 m² — exceeds the FAR limit 480% by 76.0pp (380.0 m² over)
3 12 3740 m² 1-5F 500 m² ×5、6F 460 m²、7F 413.3 m²、8F 366.7 m² total floor area 3740.0 m² is 748.0% of the site area 500.0 m² — exceeds the FAR limit 700% by 48.0pp (240.0 m² over)

読み方

  • 自動で確認された行:法規レポートの 8 行のうち、PASS は「対象地域(平面直角座標系 第IX系)」の 1 行、EVALUATED は「前面道路幅員による容積率制限(52条2項)」の 1 行だった。残る 6 行は UNEVALUATED で、FAIL の行はなかった。この状態は 5 件すべてで同じだった。
  • 未評価のまま残った行:容積率と建蔽率の行は、計画値を入力していないため「no planned value declared」と表示された。日影規制と避難規定の行は「not implemented in this stage」、住所と敷地境界の整合の行は「requires both a confirmed geocoded point and a boundary」と表示された。今回はジオコーディングを行っていない。
  • 由来タグ:制約一覧の 5 項目のうち、用途地域と建蔽率は取得(FETCHED)、前面道路は申告(DECLARED)、敷地面積は計算(DERIVED)と表示された。容積率(far_pct)は DERIVED と表示された。状態は、記録したすべての行で CONFIRMED と表示された。
  • 容積率の上限:5 件のうち 4 件(サイト 1、3、4、5)では「道路幅 × 係数」のほうが指定容積率より小さく、far_pct はその値になった。残る 1 件(サイト 2)では指定容積率のほうが小さかった。
  • 自動生成の結果:5 件すべてで「⚠ exceeds FAR」と表示され、延床面積は far_pct の上限を上回った。これは、自動生成が延床面積を容積率の上限に切り詰めないという上記の動きと一致する。建蔽率については、生成直後の初期案であり地上階を敷地全体に置いているという注記が全件で表示された。斜線については全件で「全ての階が道路斜線制限内」「全ての階が隣地斜線制限内」と表示された。
  • 道路幅を変えたとき:幅を書き換えて「Save site」を押すと、「Fetch constraints」を押し直さなくても far_pct の表示が変わった。幅 12 m では「52条2項 評価済・非拘束」と表示され、far_pct は指定容積率と同じ値になり、由来タグは FETCHED / CONFIRMED だった。それより狭い幅では DERIVED / CONFIRMED だった。自動生成の延床面積も幅によって変わった。
  • 幅を戻したとき:幅を 6 m に戻して読み直した表示は、2 件とも最初の読み取りと同じだった。
  • ここでの敷地は架空のもので、実在の区画や計画の検討結果ではない。

限界

  • 架空の長方形 5 件だけの記録であり、敷地の形、接道の状況、複数の用途地域にまたがる場合などは扱っていない。
  • 前面道路の幅と位置は筆者が仮に置いた申告値であり、現地の道路とは関係がない。
  • 画面が表示する年度の版について、国土数値情報の用途地域データのページは「精緻な作業には使用しないでください」としている。
  • 画面は取得元を「国土数値情報 A29 用途地域 — 令和元年度 (2019)」と表示するが、この表示はコード中の定数である。 用途地域のテーブルには、ファイル名や年度を記録する列がない。 このため本ノートでは、本番のデータがどの年度の版であるかを、データ自体からは確認できていない。
  • 画面の表示によれば、製品は高度地区の高さ指定と日影規制の指定を保持していない。日影規制と避難規定は、測定時点の製品では評価されない。
  • 本ノートは製品の表示の記録であり、個別の敷地についての法令適合の判断ではない。

再現手順

  • Parti にサインインし、プロジェクトを作成する。
  • Site ツールで、住所(区まで)、敷地境界の GeoJSON Polygon、前面道路(南に幅、ほかの三辺は「道路なし」)を入力し、「Save site」を押す。
  • 「Fetch constraints」を押し、制約一覧と法規レポートを読む。
  • Scheme ツールを開き、「Generate from envelope」を押し、判定の欄と「建築可能ボリューム (buildable envelope)」の欄を開いて表示を読む。
  • 道路幅を変える場合は、Site ツールで南側の幅を書き換えて「Save site」を押し、同じ手順を繰り返す。

データの帰属表記

  • 用途地域、容積率、建蔽率:出典:国土交通省国土数値情報ダウンロードサイト(https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/)。「国土数値情報(用途地域データ)」(国土交通省)を Parti が加工して表示した値を掲載している。データの年度は、上の「限界」に書いた理由で記載していない。
  • 用途地域データは、市区町村ごとに公開条件が定められている。画面が表示する年度の版について国土交通省が公表している一覧では、本ノートで扱った区(港区、新宿区、千代田区、中野区)はいずれも「オープンデータ公開可」とされている。
  • 敷地の形と座標は筆者が作成した架空の入力である。
  • Parti の使い方はParti の使い方に、DXA Labs が各製品で使うデータの出所はデータの出所と測定にまとめている。

出典

  1. 国土数値情報ダウンロードサイト 利用規約(国土交通省) (参照日 2026.10.11)
  2. 公共データ利用規約(第1.0版)(デジタル庁) (参照日 2026.10.11)
  3. 国土数値情報 用途地域データ(国土交通省) (参照日 2026.10.11)
  4. 国土数値情報 用途地域データ 市区町村別の公開条件(国土交通省) (参照日 2026.10.11)
  5. Parti の使い方(DXA Labs) (参照日 2026.10.11)
  6. データの出所と測定(DXA Labs) (参照日 2026.10.11)