問い
PropScore では、月次エネルギーデータの月ごとに「データ取得方法」を記録できる。実測でない月が増えると、排出量画面の「推計割合」と、GRESB エクスポート画面の判定はどう表示されるか。消費量をすべての物件・すべての月で同一にして、データ取得方法の違いだけを比べる。
方法
- 製品と画面:PropScore の物件一覧、物件のエネルギーデータ(CSV インポート)、排出量、GRESB エクスポートの各画面。表示言語を日本語に切り替えて記録し、文言は表示どおりに引用する。表示言語の切り替えはブラウザ側の設定で、製品のデータは変えない。
- 架空の入力:既存の架空ポートフォリオ「架空ポートフォリオ 研究ノート」の下に、架空の物件を 5 件作成した。物件名は「架空物件 k=…」で、k は 0、1、3、6、9 である。住所はすべて「東京都千代田区」(区まで)、用途 オフィス、構造 RC、延床面積 1000 m²、築年 2000、地上 5 階、取得日 2020-04-01 で、物件名のほかはすべて同じである。いずれも実在の建物ではない。
- 月次データ:2025年度(4月から翌年3月まで)の 12 か月すべてに、電力 10000 kWh を入れた。各物件の最後の k か月の「データ取得方法」を「前期実績流用」、残りの月を「実測」とし、「推計理由」もすべての行に入れた。消費量は構成上すべて同一である。
- 入力の経路:画面の月次グリッドではデータ取得方法を編集できないため、「物件名」「対象月(YYYY-MM)」「電力(kWh)」「データ取得方法」「推計理由」の列を持つ CSV(60 行)を、エネルギーデータ画面の「CSVインポート」から取り込んだ。画面の表示は「60件インポート完了」だった。取り込み後、物件ごとに 2025年度 の月次グリッドを開き、各月のデータ取得方法が入力どおりに表示されることを確認した。
- 操作:排出量画面で年度に 2025年度 を選んでから「排出量計算」を押し、各物件の「推計割合」の表示を記録した。続いて GRESB エクスポート画面で同じ年度を選んで表示を記録し、「プレビュー」を開いた。ワークブックのダウンロードと「新規提出」は行っていない。
- 測定日と本番リビジョン:2026-10-15。Cloud Run リビジョン
propscore-00030-vhj(コミット3fecf87)。記録の前後でリビジョンは同じだった。結果はこの時点の本番リビジョンの出力である。
製品の規則は、上のコミットのコードを読んで確認した。以下は PropScore の規則であり、GRESB 自身の規則の説明ではない。
- 推計割合:1 −(実測の月数 ÷ 12)。物件・年度ごとに月数で数え、消費量による重み付けはしない。データのない月も推計と同じに数える。
- 「実測」以外はすべて同じ扱い:「請求期間按分」「前期実績流用」「床面積按分」「不明」は、いずれも推計として同じに数える。
- 表示:保存された割合を百分率にして、小数第 1 位まで表示する。その下に、全月実測なら「推計なし(全月実測)」、全月のデータがあって実測でない月を含むなら「入力値が推計」と出る。
- GRESB 出力の判定(物件・年度ごと):推計割合が 0.20 を超えると不可(規則コード
R2_CEILING_EXCEEDED)。推計月数(割合 × 12 を四捨五入)を当年度と前年度で合計して 3 か月を超えると不可(R3_TWO_YEAR_CAP)。前年度は、前年度の排出量推計がある場合だけ数える。 - データがない場合の扱い:推計割合では、データのない月は実測でない月と同じに数える(分母は常に 12 か月)。一方、推計月数の規則は前年度のエネルギーデータではなく前年度の排出量推計を読み、推計がなければ前年度分を 0 か月とする。画面の「この確認で保証されないこと」の最後の項目も「2年間の上限は、PropScoreに存在する前年度のデータのみで評価します。前年度が無い場合は当年度のみで計算するため、実際の件数より少なく出ることがあります。」と表示した。
- ワークブックはポートフォリオ単位:不可の物件・年度が一件でもあれば、ポートフォリオのワークブックは出力されない。画面の「Excelダウンロード」が使えるのは、画面の「全体データ完成度」が 50% 以上で、かつ不可の物件がない場合だけである。
- プレビューは読み取りのみ:プレビューを開いても、提出履歴には何も記録されない。
結果
排出量画面の表示。
| 物件 | グリッドで実測でない月数 | 推計割合 | 推計割合の下の表示 |
|---|---|---|---|
| 架空物件 k=0 | 0 | 0.0% | 推計なし(全月実測) |
| 架空物件 k=1 | 1 | 8.3% | 入力値が推計 |
| 架空物件 k=3 | 3 | 25.0% | 入力値が推計 |
| 架空物件 k=6 | 6 | 50.0% | 入力値が推計 |
| 架空物件 k=9 | 9 | 75.0% | 入力値が推計 |
GRESB エクスポート画面の表示(同じ年度)。
| 物件 | 提出できない物件年度の一覧 | 一覧に表示された規則コード |
|---|---|---|
| 架空物件 k=0 | 一覧に表示なし | — |
| 架空物件 k=1 | 一覧に表示なし | — |
| 架空物件 k=3 | 推計割合 最低 25.0% | R2_CEILING_EXCEEDED |
| 架空物件 k=6 | 推計割合 最低 50.0% | R2_CEILING_EXCEEDED、R3_TWO_YEAR_CAP |
| 架空物件 k=9 | 推計割合 最低 75.0% | R2_CEILING_EXCEEDED、R3_TWO_YEAR_CAP |
- 一覧の見出しは「3件の物件年度はGRESBに提出できません」で、その下に次の文が表示された:「これらの数値は、GRESB 2026年版ルールが禁止する手法で作成されたか、上限を超えています。修正されるまでExcelエクスポートは無効です。提出用ワークブックは全件一括であるため、1件でも不可の物件があれば何も出力しません。」
- 一覧の各行には、規則の詳細が英語で表示された。例として「架空物件 k=6」の行は次のとおり:「R2_CEILING_EXCEEDED: 50.0% of the reporting period is estimated, above GRESB's 20% ceiling; R3_TWO_YEAR_CAP: 6 month(s) in FY2025 alone exceeds GRESB's hard cap of 3 months across both reporting years」
- 画面上部の「全体データ完成度」は「100%」で、その下に「データ完成度が50%未満のためエクスポートできません」と表示された。
- 「プレビュー」では、「全体データ完成度」が「39%」、状態の表示が「準備中」だった。プレビューを閉じた後の「提出履歴」の表示は「提出データがありません」だった。
読み方
- 消費量は構成上すべて同一なので、表の差はデータ取得方法の入力だけから生じている。
- 実測でない月が 1 か月の物件(推計割合 8.3%)は提出できない物件年度の一覧に出ず、3 か月以上の物件は出た。今回の入力で観測した境目は k=1 と k=3 の間であり、その間の k は測っていない。
- k=3 の物件には推計割合の規則コードだけが表示され、k=6、9 の物件には推計月数の規則コードも表示された。
- 一覧に出たのは 3 件だが、ワークブックはポートフォリオ単位なので、一覧に出なかった物件を含め、このポートフォリオの 2025年度 のワークブックは出力されない状態だった。
- 表示された文言とコードの規則が食い違う箇所が三つあった。
- 「データ完成度が50%未満のためエクスポートできません」:コードは、ダウンロードできないときには理由によらずこの文を出し、完成度とは別に不可の物件があるだけでダウンロードを止める。今回の理由は不可の物件であり、表示された完成度は「100%」だったので、文言とコード上の理由は異なる。
- 「この確認で保証されないこと」の最初の項目「estimated_ratio は「何か月分のデータが存在するか」から算出されるため、システムが外挿した割合を測っており、入力そのものの質は測っていません。顧客が自ら推計して入力した月も、ここでは実測として数えられます。したがって以下の割合はすべて下限値です。」:コードは、データ取得方法が「実測」でない月を推計として数える。今回「前期実績流用」とした月は推計として数えられており、この項目の記述とコードの扱いは異なる。
- 「全体データ完成度」:画面上部の値は物件ごとのデータ月数の割合の平均であり、プレビューの値はデータのある指標の割合である。同じ見出しで別の量が表示されている。
- 排出量の値は本ノートの対象外とした。
限界
- 入力はすべて架空であり、実在の物件や実際の報告の結果ではない。
- 扱ったのは 1 つのポートフォリオ、2025年度、電力のみである。前年度のエネルギーデータは入れず、前年度の排出量計算も行っていない。推計月数の規則(
R3_TWO_YEAR_CAP)は、前年度の排出量推計がない場合、前年度分を 0 か月として数える。k=6、9 の物件にこの規則が表示されたのは、当年度の推計月数だけで上限の 3 か月を超えたためであり、規則の詳細にも当年度だけであること(「alone」)が表示された。前年度を合算する部分は、今回の入力では使われていない。 - 測った k は 0、1、3、6、9 だけである。
- 実測でない月の取得方法は「前期実績流用」だけを使った。ほかの取得方法でも同じに数えることはコードで確認したが、画面では測っていない。
- 「Excelダウンロード」は押していない。ボタンが押せない状態だったかは、画面の読み取りでは確認していない。
- 画面の文言は GRESB の規則に言及しているが、それが GRESB 自身の規則と一致するかは確認していない。本ノートは GRESB の文書を参照しておらず、提出の可否についての助言でもない。
- 判定は測定時点の本番リビジョンのもので、製品の更新により変わりうる。
再現手順
- PropScore にサインインし、ポートフォリオを選んで物件を作成する(必須項目は上のとおり)。
- 「物件名」「対象月(YYYY-MM)」「電力(kWh)」「データ取得方法」「推計理由」の列を持つ CSV を用意し、物件のエネルギーデータ画面の「CSVインポート」から取り込む。データ取得方法と推計理由は空欄にしない。
- 排出量画面で年度を選び、「排出量計算」を押す。
- GRESB エクスポート画面で同じ年度を選び、表示を読み、「プレビュー」を開く。
データの帰属表記
- 本ノートの入力はすべて筆者が作成した架空のデータであり、外部のデータセットの値は掲載していない。
- 掲載した数値は PropScore の画面に表示された値である。
- PropScore の使い方はPropScore の概要に、DXA Labs が各製品で使うデータの出所はデータの出所と測定にまとめている。